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農業と科学 平成20年2月
本号の内容
§茶園におけるDd入り被覆尿素の硝酸化成抑制効果
Kagoshima Agricultural Development Center
茶業部 環境研究室
主任研究員 三浦 伸之
§小ギクの効率的施肥
沖縄県農業研究センター 野菜花き班
主任研究員 久場 峯子
§コマツナ・ホウレンソウの3作1回施肥における減肥栽培
埼玉県農林総合研究センター 園芸研究所
専門研究員 山崎 晴民
Kagoshima Agricultural Development Center
茶業部 環境研究室
主任研究員 三浦 伸之
茶園では,緑茶の旨味成分であるアミノ酸等の窒素含有率を高めるため,多量な施肥が行われてきた。しかし,施肥に由来する硝酸態窒素による河川や地下水の汚染が指摘され,現在は施肥量削減による窒素溶脱低減対策が行われている1)。鹿児島県では,全国に先駆けて,年間窒素施肥基準を河川及び地下水の環境基準がクリアできる50kg/10a2)と定めて,普及・啓発に努めている。
しかし,環境にやさしいお茶づくりを推進するためには,更に窒素溶脱を低減することが必要である。その対策の一つとして,徐々に肥料成分が溶出する被覆尿素や硝酸化成抑制剤(硝化抑制剤)であるDd(Dicyandiamide)の利用が効果的であると言われているが,この2つの資材の効果を併せ持つ,「Dd入り被覆尿素(商品名:DdLPコート)」がチッソ旭肥料(株)より開発された。
そこで今回は,この「Dd入り被覆尿素」の施用効果と利用法について検討した結果,一定の成果が得られた3)ので紹介する。
「硝酸化成抑制剤(硝化抑制剤)」とは,土壌中のアンモニア態窒素が微生物(主にアンモニア酸化細菌)の働きによって亜硝酸態窒素に変化する「硝酸化成(硝化)」を抑制する資材のことで,雨による硝酸態窒素の地下水への溶脱低減が期待できる(図1)。そして,「Dd入り被覆尿素」とは,被覆尿素の被膜の内側にDdを入れた資材で,従来のDd入り化成肥料より長期間の硝化抑制効果が期待できる(図2)。


市販の不織布袋(お茶パック)に,各被覆尿素を2gずつ入れ,秋肥(8~9月)及び春肥(2月)・夏肥(4~5月,一番茶摘採直後)時期に当部内の厚層多腐植質黒ボク土茶園のうね間深さ5cm位置に埋設し,窒素溶出率を算出した(3反復)。
各施肥時期におけるDd入り被覆尿素の窒素溶出特性は,8~9月の秋肥時期施用ではリニア型,4~5月の夏肥時期施用ではシグモイド型,2月の春肥時期施用ではスーパーシグモイド型に近似しており,他の被覆尿素と同様で温度依存性が高かった。ところが,DdLPコート40及び70の窒素溶出はいずれもLPコートに比べて初期溶出が遅く,特にDdLPコート70では,春肥時期の溶出が著しく遅かった。DdLPコート40の春肥時期の溶出も遅かったが,LPコート70と同程度であった(図3)。

この原因として,尿素にDdと被膜を二重にコーティングしているDdLPコートの構造上の理由が考えられた。これらのことから,Dd入り被覆尿素を鹿児島県で普及されているLPコート70の代替として利用するには,特に春肥施用ではDdLPコート70よりDdLPコート40が望ましいと考えられた。
当部内の多腐植質黒ボク土,’やぶきた’樹齢14年のライシメーター園(3.6㎡,深さ1m)において,2001年8月~2005年9月まで試験を行った。対照区は,秋肥,夏肥,春肥としてLPコート70入り有機質配合肥料(窒素成分の約50%はLPコート70),芽出し肥として硫安を組み合わせ,年間窒素施用量を50kg/10aとした。一方,Dd区は,対照区の資材に含まれるLPコート70をDdLPコート70(3年目の春肥はDdLPコート40)に替えて,その他の資材及び窒素施用量は全て対照区と同様にした(3反復)(表1)。

年間降水量(前年9月~当年8月)は,1,4年目でそれぞれ2,648,2,569mmと部内の平年値(30年平均)と同等であったが,2,3年目ではそれぞれ2,273,1, 925mmと少雨傾向であった。
地下1mにおける土壌浸透水量は,両区で大差なかったが,Dd区の浸透水中の硝酸態窒素濃度は,対照区に比べて,1,2年目は低く推移し,特に1年目の7~8月で顕著な差が認められた(図4)。このことは,Ddの施用により硝酸態窒素の生成が抑えられたためと考えられた。

当部内の厚層多腐植質黒ボク土,’やぶきた’樹齢約30年の成木園において,2001年8月~2004年5月の中切り更新処理まで,4の試験と同様の肥培管理を行った(3反復,但し,荒茶加工は3反復の生葉を混合した)。
Dd区の生葉収量は,3年間の各茶期を通じて,対照区と同等であった(図5)が,Dd区の荒茶品質は,対照区に比べて,二,三番茶の内質で優れる傾向が認められた(表2)。


荒茶の全窒素及び遊離アミノ酸含有率を見ると,Dd区は,対照区に比べて,1年目一番茶及び2年目三番茶以外の各茶期で高かった(表3)ことから,DdLPコートの施用による窒素吸収量の増加が,二,三番茶の品質向上に寄与したと考えられた。

チャは野菜類と異なり,土壌中の硝酸よりもアンモニアを優先的に吸収する好アンモニア性作物であり,培養液中の無機態窒素に占めるアンモニア態窒素比率が高い場合,一番茶の窒素及びアミノ酸含有率が高くなる4)と言われている。うね間土壌中における無機態窒素は,1年目4月を除いて,両区の差はなかった。1年目4月の0~20cm層位でDd区が少なかったが,春肥に溶出の遅いDdLPコート70を施用したためと考えられた(図
6)。

しかし,アンモニア態窒素比は,特に1年目3~7月及び2年目3~4月の20~40cm層位でDd区が高く推移しており,Ddの硝化抑制によるものと考えられた(図7)。

これらのことから,本研究における硝化抑制によるうね間土壌中のアンモニア態窒素比の向上が,窒素吸収量を増加させ,荒茶の全窒素及びアミノ酸含有率を高めて,荒茶品質の向上に寄与したと考えられた。
図4を見ると,2004年11月や2005年3月の溶脱窒素濃度が,差は小さいものの,Dd区で逆に高くなっており,図6,7では,2004年のうね間土壌中のアンモニア態窒素比は両区差がなかった。うね間跡地土壌を分析した結果,可給態窒素がDd区で対照区より多かった(表4)。

このことから,Dd入り被覆尿素の連用により,1~2年目に溶脱が抑えられたうね間土壌中のアンモニア態窒素が,有機化して蓄積し,3~4年目に遅れて溶脱した可能性が考えられた。また,2~3年目は少雨傾向であったことも,この結果を助長していると思われた。一方,28℃2週間培養により,うね間跡地土壌のアンモニア酸化細菌を調べたところ,Dd(水溶液)を添加してもDd区のアンモニア酸化細菌は減少しなかった(図8)。

このことは,Dd入り被覆尿素の連用により,アンモニア酸化細菌のDdに対する感受性が低下したと考えられるだけでなく,もともとDdに感受性のないアンモニア酸化細菌が優勢になったことや,Ddを分解する微生物が増加したこと等の可能性も推測された。
これらの問題を回避するためには,まず,適正なDd入り被覆尿素の配合割合の設定と,年間連用でない効果的な施用時期の絞り込みを行う必要がある。現在,Dd入り被覆尿素の配合割合を上記試験の約半分の配合肥料(鹿児島県では「フレッシュグリーン」等の銘柄で販売・普及されている)にして,更に「秋肥+夏肥施用」のように,Ddを半年間だけ効かせる施用法を検討しており,3年目における効果の持続性も確認している(未発表)。
以上のように,茶園におけるDd入り被覆尿素の利用は,Ddの持続的な硝化抑制作用により,窒素溶脱を低減させ,施肥窒素の吸収率を高めることで,二,三番茶の品質を向上させることが明らかになった。
鹿児島県では,「クリーンな茶づくり」「環境保全型茶業」を推進し,1991年は県平均で年間窒素施肥量84kg/10aであったが,2005年には約30%減の56kg/10aに削減することができた。しかし,施肥量削減による収量及び品質低下を懸念する農業者も多く,更なる削減が難しい状況となっている。今後も,我々は農業者の期待に応えられるよう,施肥量を削減しても更に高収量及び高品質な茶が得られる様々な技術開発に取り組んでいきたいと考えている。
1)野中邦彦:茶園における窒素環境負荷とその低減のための施肥技術
茶業研究報告,100,29~41(2005)
2)三浦伸之ら:被覆尿素を利用した省力・低投入型施肥法(せん茶)
茶業研究報告,100,60~62(2005)
3)三浦伸之ら:茶園におけるジシアンジアミド入り被覆尿素の施用効果
茶業研究報告,103,41~50(2007)
4)石垣幸三:茶樹の栄養特性に関する研究
茶業試験場研究報告,14,1~152(1978)
沖縄県農業研究センタ一 野菜花き班
主任研究員 久場峯子
沖縄県は全国一の小ギク産地で、499haの作付面積があるが,そのほとんどが露地栽培である。施肥は油粕150kg/10a,窒素40kg/10a,リン酸・カリそれぞれ35kg/10aにも及び,環境負荷の一因となっている可能性が高い。一方小ギクの単価が低迷を続ける中,コスト低減が求められている。そこで肥効調節型肥料の利用を検討した。
低保水性故に硝酸態窒素溶出が最も問題になる島尻マージ圃場における,減肥全量基肥体系による硝酸態窒素の溶脱軽減と肥料・作業コストの低減を春彼岸出荷用小ギクで検討した。肥効調節型肥料として溶出期間100日でリニア型の被覆尿素70%入り複合肥料(N:P2O5:K2O=15:11:10)を用いた。各処理区の施肥量は表1に示した。


硝酸態窒素溶脱の評価法として,浸透水採取法やライシメータ一法等があるが,使用圃場が低保水性故に硝酸態窒素溶出が最も問題になる島尻マージであるため,定期的な浸透水採取が困難と考えられたので,1990年代のモンタナ州立大学でSkogley教授を中心に開発中であったresin capsule法1)を用いた。resin capsule法は,”各種抽出液で抽出される有効態あるいは交換性なる目的イオン濃度を測定する”現在主流の土壌養分評価法が有する種々の問題点2)を克服するために,開発されたものである。この評価法はPhytoavailability Soil Test(PST)3)と命名され,イオン交換樹脂を球状のポリエステル網に詰めて作成したresin capsule(図2)を,土壌ペーストに一定期間浸漬した後,H⁺やOH⁻で置換蓄積されたカチオンやアニオンを2M-HClでstrippingし,その塩酸液中のカチオンやアニオンを測定するものである。

これまでもイオン交換樹脂を用いた養分評価法は種々あったが4),PSTはイオン交換樹脂を球状に詰めた点に根本的な違いがある。即ち,土壌のイオン拡散能を反映し5),初期のイオン交換,土壌中のイオンの拡散,resin capsule内のイオン拡散,電気的中性の維持の4ステップで,連続的sinkとしての機能を有す。その手法を土壌中における硝酸態窒素モニタリングに応用した6)The following is a list of the most common problems with the "C" in the "C" column.
生育・収量については,表2に示したように慣行施肥の微生物分解型緩効性窒素入り複合肥料(CDU)と被覆尿素入り複合肥料との間に,また被覆尿素入り複合肥料減肥との間に差は無かった。

これは窒素・リン酸・カリ減肥の可能性を示唆するものである。更に,被覆尿素の利用により窒素利用率が向上し(表3),2回の追肥を省略した全量基肥でも生育・収量に差が無かった。

今回用いた被覆尿素の窒素溶出は,図1のように低温期(地温15℃)を挟むため理論値より遅く,80%溶出に150日を要したため,定植後60日で約13kg/10aの窒素吸収を可能にするには,70日タイプが適当と考えられる。
図3に示した装置を用い10日ごとにresin capsuleを取り替え,各期間毎に溶出・浸透した硝酸態窒素を測定した。

図4で明らかなように,慣行施肥体系では施肥後10日(11月25日)で約25%が,30日で約40%が作土層に溶出し,2月以降は50cm以下の下層土へ移動した。しかし被覆肥料を用いた全量基肥体系では溶出及び下層への移動が緩慢であった。

各時期毎の硝酸態窒素溶出・浸透量を積算し,全生育期間中に土層1m内に溶出した硝酸態窒素量を図5に示した。この図から,被覆尿素肥料の標準量施用では慣行施肥体系の約3割,30%減肥では約5割の溶脱軽減効果があると考えられる。

以上の結果から,土壌中における硝酸態窒素の挙動評価にresin capsule法が利用可能であることが示唆され,島尻マージ地域における彼岸出荷用小ギクの環境保全に役立つ施肥体系として,リニア型70日溶出タイプの被覆尿素70%入り複合肥料(N:P2O5:K2O=15:11:10)の全量基肥施用(180kg/10a)が推奨される。この施肥体系により,収量・品質を維持した省力化(2回追肥省略)・低コスト化(40%減)・環境負荷軽減(50%)が可能と考えられる。
なお本文は,日本土壌肥料学会九州支部編2004年度福岡大会記念誌”九州・沖縄の農業と土壌肥料”掲載の”被覆尿素入り複合肥料利用による小ギクの環境負荷軽減効果”を加筆再編したものである。
1)Earl O. Skogley:The phytoavailability soil test-PST. Commun. Soil Sci. Plant Anal.,21,1229-1243(1990)
2)Y.A.Haby et al.:Effect of sample pretreatment on extractable soil potassium. Commun. Soil Sci. Plant Anal.,19,91-106(1988)
3)J.E.Yang, et al.:Phytoavailability Soil Test(Development and verification of theory). So il Sci. Soc. Am. J.,,55,1358-1365(1991)
4)Earl O. Skogley:Synthetic ion-exchange resins(Soil and environmental studies). J. Environ. Qual.,25,13-24(1996)
5)J.E.Yang, et al.:Diffusion kinetics of multinutrient accumulation by mixed-bed ion-exchange resin. Soil Sci. Soc. Am. J.,56,408-414(1992)
6)Earl O. Skogley:The universal bioabailability environment/soil test UNIBEST. Commun. Soil Sci. Plant Anal.,23,2225-2246(1992)
埼玉県農林総合研究センター 園芸研究所
専門研究員 山崎 晴民
埼玉県南西部は露地野菜の大産地となっており,ホウレンソウ,コマツナ,ニンジン,サトイモ等の葉根菜類の露地栽培が盛んに行われている。一方,周年的な露地葉根菜類の生産拡大に伴って施肥による地下水の硝酸性窒素濃度の上昇が懸念され,その中でも,ホウレンソウ,コマツナは周年的な栽培がみられ,窒素投入量が多い傾向にある。
そこで,露地野菜畑の窒素削減技術を開発するため,葉菜類(コマツナ及びホウレンソウ)の栽培において,被覆窒素肥料と畦内施肥を組み合わせた施肥法が生育・収量に及ぼす影響について検討したので,その結果を紹介する。なお,この結果は交付金プロジェクト「森林・農地・水域を通ずる自然循環機能の高度な利用技術の開発」の一課題である「屋敷林-畑-平地林の窒素循環と環境負荷物質の適正管理及び低減化技術の開発」の中で取り組んだ研究の一部である。
埼玉県南西部は黒ボク土を主とした土壌が広がっており,中でも三富地域(川越市,所沢市,狭山市,ふじみ野市,三芳町の4市1町にまたがる地域)は1400haの耕地面積をもち,畑地は屋敷林や平地林に囲まれ,昔ながらの景観を維持している地域も多く,平地林の落ち葉は堆肥の給源として利用されている。土壌は表層腐植質黒ボク士で,傾斜はほとんどない平坦な地形で,野菜畑を中心とした農業が展開されている(図1)。

三富地域の土壌実態を明らかにするため,落ち葉を長年持ち出している平地林,放置林,落ち葉堆肥を長年施用している野菜畑を選定し,土壌調査を実施した。
平地林の硝酸態窒素の蓄積は表層土壌(30cm以内)で見られ,この層の硝酸態窒素の蓄積量は山掃き林に比べ放置林で多い傾向が認められた。下層の硝酸態窒素は各林とも0.2~0.5mg/100g程度であり,平地林からは,環境中への窒素負荷(下層への溶脱)は少ないと推察された(図3)。

一方,露地野菜畑では平地林に比べ明らかに各層の硝酸態窒素含量が高く,垂直分布から,窒素が下層へ移行する傾向がみられた(図4)。

土壌中の硝酸態窒素を高める要因として,家畜糞堆肥や化学肥料の施用による窒素成分の投入が考えられ,作物により吸収されない窒素が,下層へ移行し,地下水の硝酸性窒素濃度の上昇に結びつくことが懸念される。三富地域においても窒素成分の投入は化学肥料が多くを占めており(図2),さらに,野菜類では作物体中の硝酸濃度が低いことが求められることから,施肥窒素の削減を行う技術の開発が必要である。

そこで,この地域で栽培が多い葉菜類のコマツナ及びホウレンソウについて,被覆窒素肥料と畦内施肥を組み合わせた3作1回による施肥法が生育・収量に及ぼす影響について検討した。
葉菜類の栽培では,通常は作付け毎に施肥を行うが,本施肥法では施肥効率の向上とともに施肥の省力化を図るために3作分の施肥を1作目の作付前に施用する方法を検討した。通常,葉菜類の栽培では1作に窒素として1~2kg/a程度施用する。そこで,対照区では各作付けの前に1.2~1.5kg/aを施用し,3作1回施肥では1作前に3作分の施肥を行い栽培を実施した。
所内試験として,1作目は,5月中旬播きのホウレンソウ,2作目及び3作目は6月下旬及び7月下旬播きコマツナを栽培(栽培期間約100日)した。対照区は全面施肥で3作合計の窒素施肥量を4kg/aとした。3作1回施肥区は長期溶出型の被覆燐硝安加里(140日タイプ窒素で13.1%)と燐硝安加里(窒素で1.0%)の混合区と溶出日数の異なる被覆尿素(40:80:120日タイプ=窒素で5.2:5.2:4.0%)と硫安(窒素成分で1.36%)を組み合わせた被覆尿素混合区を設けた。施肥量は全面施肥では対照区と窒素を同等量施用し,畦内施肥では窒素2割削減区及び5割削減区(被覆尿素混合区のみ)を設けた。
長期溶出型の被覆燐硝安加里混合区では,収量指数は79(60~92)であったが,被覆尿素混合区では,収量指数は103(98~113)となり,1作ごとに施肥を実施する対照区と比べても同等であり,3作にわたって安定した収量を得ることができた。
また,ホウレンソウ及びコマツナを作付けする畦にのみ施肥(ベッド幅80cm,通路幅80cmにおける畦内施肥)することにより,被覆尿素混合5割減区の窒素施肥量では収量指数は77(53~97)と劣ったのに対し,2割減区では102(91~116)と対照区とほぼ同等で,溶出日数の異なる被覆尿素と畦内施肥を組み合わせることにより,2割の窒素施肥量の削減が可能であった(図5)。

10月下旬播き,11月上旬及び2月上旬播きホウレンソウ3作の栽培(栽培期間約200日)において,春夏作とほぼ同様の施肥方法によって検討を行った。収量指数は,被覆燐硝安加里(140日タイプ)区では79(63~92),被覆尿素混合区では91(70~116)となり,1作ごとに施肥を実施する対照区と比べて低い傾向がみられ,春夏作に比べると3作の安定した収量を得ることができなかった。
また,畦内施肥を実施した被覆尿素混合5割減区の窒素施肥量では収量指数は70(39~87),2割減では90(67~112)と3作目の冬期の収量低下が大きく,春夏作に比べると減収する傾向が認められ,秋冬作では3作1回施肥を適用することは困難とみられた(図6)。

春夏作の場合,栽培期間中の地温は18~30℃で,平均25℃であったのに対し,秋冬作の場合,地温は7~24℃で平均13℃で低かった。窒素の溶出は地温の影響を大きく受け,春夏作では栽培期間中に約9割程度が溶出した(図7)のに対し,秋冬作では栽培期間は春夏作の約2倍と長かったが,溶出した窒素は約7割で,溶出量が低い傾向が認められた。

所内試験に基づき,現地において春夏作の葉菜類の3作1回施肥について検討を行った。コマツナを周年栽培しているほ場で,被覆尿素混合肥料と畦内施肥を組み合わせた3作1回施肥では,窒素施肥量を3割削減しても速効性化成肥料を毎作施用する栽培とほぼ同等の収量・品質を得ることができた(図8)。

春から夏にかけて栽培したコマツナの3作1回施肥の窒素吸収量は0.6~1.0kg/aで,3作の合計では2.4kg/a程度となった。被覆尿素混合肥料と畦内施肥を組み合わせた3作1回施肥の施肥窒素利用率は47.8~56.7%と毎作施肥する場合(44.3%)に比べ向上した(表1)。

以上紹介した3作1回施肥による施肥法では,春から夏の地温が高まる作期において,肥料の効果が安定して得られることが明らかになった(図9)。

また,今回検討した野菜畑の土壌は黒ボク土露地野菜地帯であり, この施肥法を利用することにより硝酸性窒素が与える環境負荷を低減することができるものと期待される。
現在,夏秋作において,肥効タイプの異なる被覆肥料を用いた3作1回施肥について検討を進めている。